研究概要 |
本研究では昨年度に導入した高性能のArFレーザー気化装置を誘導結合プラズマ質量分析装置(以下ICP-MSと略)に導入し,多岐にわたる試料を分析し,有用なデータを解析中である.研究対象は,海底熱水鉱床およびキプロス型銅鉱床産の鉱石中のいくつかの資源鉱物の組織・化学組成の解析であり,鉱物中の微量成分の分配,結晶サイズ,及び硫化鉱物の元素の拡散性から,鉱床生成プロセスを考察した. 1.資源鉱物特に硫化鉱物間の微量成分の分配実験を行い,誘導結合プラズマ質量分析装置(以下ICP-MSと略)にとりつけたレーザー気化装置により,微小領域の微量成分分析を行った.微小領域の分析ではあるが,黄鉄鉱は,数日程度の短時間の合成実験では分配平衡には達しにくく,数ヶ月間の実験が必要であることが判明した. 2.この分析を天然の試料に応用し,ICP-MS微量成分分析で得た微小領域データおよびPIXEデータから,温度に関する解析を試み,また,鉱床生成の温度,鉱物組合せ,石英や閃亜鉛鉱中の流体包有物の研究から,熱水鉱化作用の全体像を化学的に解明つつある. a.微小領域の微量成分分析や石英,閃亜鉛鉱中の個々の流体包有物の研究は,1個1個についての研究を進めている.これらのデータから岩手県山口銅,タングステン鉱床の形成機構を明らかにしている. b.西大西洋マヌス海盆デスモス・カルデラにおける熱水変質と鉱化作用を元素の移動の立場から解明し,公表した.さらには,この海底熱水鉱床の鉱石,各硫化鉱物中の微視的安定同位体比変動や流体包有物を詳細に検討し,オマーンにおける国際学会で発表した.
|