研究概要 |
界面活性剤は水中で分子同士が配向を揃えて集合し,会合体(ミセル)を作る。濃度が一定値以上に達すると、これらの一次集合体はさらに集合してリオトロピック液晶相などの高次構造を形成する。これらの分子組織体は,分子サイズに比べてはるかに長いnmスケールの構造を持つため,極く弱い摂動により大きな変動を受ける。本研究は,非イオン界面活性剤C_<16>H_<33>(OC_2H_4)_7OHと水が作るラメラ相の構造に対するずり流動場の効果を,散乱法を用いて調べたものである。 まず,ずり流動場をかけない静止状態の微細構造を調べるために,ラメラ相全域における詳細なX線小角散乱(SAXS)の測定および解析を行なった。その結果,低濃度・低温度領域ではラメラ相を構成する膜が,孔などの欠陥を持つことが明らかになった。またこれらの欠陥は,undulationと呼ばれる膜の波打ち運動を抑制することが示唆された。 次に,ずり流動場下で中性子小角散乱の測定を行なった。ずり速度は従来に比べてはるかに低い10^<-3>〜10^2s^<-1>範囲とし,流動方向,速度勾配の方向,渦方向それぞれにの方向における回折ピークを観測した。ラメラ面間隔は,いずれの配向においても,ずり速度1s^<-1>付近において大きく(最大約3割)減少し,ずり速度をさらに増加させると再びやや増加することがわかった。 これらの結果を,SAXS曲線の解析結果をふまえて検討した結果,ずり流動場によってラメラ相の膜間の水層力排除され,濃度の異なる2つの相に分離することが示唆された。このことを確認するために,ずり流動場下で小角光散乱を測定するための装置を製作した。
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