配分額 *注記 |
14,400千円 (直接経費: 14,400千円)
2002年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2001年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2000年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1999年度: 7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
|
研究概要 |
本研究では「樹木開花量の年変動により送粉者個体群が年変動し,それにより送粉者を共有する林床植物の結実率も年変動する」という仮説を証明するために次の3項目について調査し,以下の知見を得た。 1.虫媒性樹種の開花量:マルハナバチ利用樹種8種を含む,約20種の樹木の開花量の年変動を定量化した。とくに開花量の年変動が大きいアオダモについてはその繁殖システムを明らかにした。またハクウンボクについては光合成産物のトレースを行い,非繁殖シュートから繁殖器官への転流が開花量決定に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 2.マルハバチの個体数:森林調査区においては,春期の越冬女王の個体数(標識再捕獲法による)は彼女らが生まれた前年の樹木開花量と,ワーカー個体数(ウィンドウトラップ採集法による)は当年の樹木開花量とそれぞれ同調した年次変動パタンを示した。マルハナバチと樹木開花量の垂直分布の季節変化パタンから,マルハナバチが林冠木の開花量と関連して飛翔空間を決定することが示唆された.森林と草原におけるワーカー個体数の季節変化から,コマルハナバチの草原と森林の利用割合が季節変化しないが,オオマルハナバチは季節によりいずれか一方の生息地に特化するという生息地利用における種間の違いが認められ,これが両者の年次変動パタンの違いに関連していることが示唆された。 3.林床性草本の繁殖成功:10種の繁殖特性と結実成功を4年間評価し,エゾエンゴサクを含む林床性植物の繁殖システムの概要を評価できた。また,光環境の異なる林縁と林内での林床植物の結実率を比較することにより,資源制限と花粉制限の影響を相対的に評価した。 本研究により初めて温帯林で送粉系の年次変動が定量的に記述され,上記の仮説が部分的に支持された。このことは,送粉系の動的側面を適切に評価するためには長期的モニタリングがきわめて重要であることを示唆する。
|