研究分担者 |
原田 祐子 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80312544)
彦坂 幸毅 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10272006)
酒井 聡樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90272004)
彦坂 寿江 東京大学, 大学院・理学系研究科・附属植物園, 助手 (20323503)
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研究概要 |
一年生草本のオオオナモミを材料に大気CO2濃度の上昇が繁殖収量に与える影響について調べた.昨年度は,高CO2により繁殖成長は促進されたものの,種子生産は促進されないことを見いだした.この原因を明らかにするため,個体の窒素利用を解析した.この結果,高CO2条件では繁殖期間後期に葉の枯死が遅れ,葉からの窒素回収効率が低下したことが明らかになった.繁殖器官への窒素投資が不足したことが種子生産の制限につながったと考えられた. オオオナモミを用いて異なる密度の群落を育成し,群落内の個体の成長を繁殖終了まで追跡した.個体間の光獲得競争を定量化する手法を開発した.この手法は,群落内の個体と,群落から外に出した個体の受光量を測定し,両者の受光量の違いから相互作用の大きさを推定するものである.オオオナモミ群落内の個体間相互作用は比較的大きいこと,高密度群落ほど相互作用が大きいことが見いだされた. 種子生産における大きさと数のトレードオフを解析した,シンク制約成長モデルを紹介した.このモデルでは,発達中の種子が親個体から資源を吸収する速度に制約があり,また,維持呼吸による資源の消失があると仮定している.このモデルが予測する大きさと数のトレードオフでは,種子の数が減っても,種子はそれほどには大きくならない.そして,種子の数が少ないほど,種子生産に投資した貯蔵資源の利用効率(種子の総量/貯蔵資源量)は低下してしまう.そのため,種子を小さくして種子数を増やすことが有利となり,最適な種子の大きさはSmith and Fretwellのモデルのものよりも小さくなる.
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