配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
2002年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2001年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2000年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1999年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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研究概要 |
1.網室でのいくつかの異なるタイプの実験により,トラマルハナバチのサクラソウへの訪花行動,受粉および花粉の持ち越しパターンを実測し,サクラソウ個体群のミクロスケールでの空間構造がマルハナバチの授粉行動に影響をおよぼすことが明らかとなった.また北海道・長野の自生地および実験個体群における遺伝解析の結果から花粉および種子を通じた遺伝子流動パターンが明らかとなった.これらの結果に基づき,ポリネータの行動からサクラソウ個体群の遺伝子流動を予測するモデルが作成された. 2.北海道のサクラソウ自生地において,サイズが小さい個体群やポリネータの利用度が低い個体群では受粉数が少なく,結実が制限されていることが明らかとなった.また,個体群の縮小・孤立化を模倣した人工授粉の結果,花粉親数の制限により発芽率が低下し繁殖成功度が低くなる場合があること,送粉効率が悪いときに長花柱花の一部で生産される自殖種子も強い近交弱勢により次世代への貢献は低いことが示された.以上から個体群の孤立化が送粉への影響を介して繁殖を制限することが明らかとなった. 3.サクラソウに近縁なオオサクラソウ・ユキワリソウ・カッコソウについて各自生地における個体群の分布と空間構造,訪花昆虫,種子生産,異型花柱性に関する基本的な特性の調査を行った.いずれの種も自家・同型不和合性を有し,種子生産には有効なポリネータによる送粉が必要であることが示された. 4.北海道の海岸草原における送粉共生系の群集レベルでの調査に基づく送粉有効性の指標化により,冷温帯の草原生態系におけるマルハナバチ類のポリネータとしての有効性が明確に示された. 5.技術者不足により発信器の開発には至らなかったが,トラマルハナバチ自然巣の発見に成功し,巣の出入りと花粉荷の分析からコロニーが利用する花資源とコロニーの発達状況に関するデータが得られた. 6.本研究で得られた植物とポリネータとの送粉を介した相互作用に関わる遺伝子から景観までのスケールにわたる成果に基づき,異型花柱性植物とそのポリネータの保全の具体的指針を提案することができる.
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