配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
2001年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2000年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1999年度: 8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
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研究概要 |
植物の無配生殖の起源を明らかにする目的で以下の研究を行った. 1.シケチシダ(4倍体)とイッポンワラビ(2倍体)の種間雑種(3倍体)ハコネシケチシダは不稔とされるが,東大植物園「シダ園」という人工環境下で,無配生殖によって繁殖することを確かめた. 2.酵素多型分析とDNA塩基配列解析によって,ハコネシケチシダ幼植物の多くの個体は「シダ園」及び周辺で栽培しているハコネシケチジダ成個体から由来したことがわかった.さらに,日本各地のハコネシケチシダにはイッポンワラビあるいはシケチシダを母親とする集団があり,ハコネシケチシダそのものが複数回起源であることを確かめた. 3.ハコネシケチシダの胞子形成過程を観察した.1個の胞原細胞は有性生殖シダと同様に4回の細胞分裂の結果116個の胞子母細胞になるが,引き続き起こる減数分裂は異常で,ほとんどの胞子は不稔であったが,Doop-Manton型やBraithwaite型とは異なる非減数胞子形成様式によって,稔性のある非減数胞子がわずかながらつくられることが明らかになった. 4.日本各地のハコネシケチシダ個体間で正常な非減数胞子形成頻度と非減数配偶体形成頻度を.比較したところ,両方の頻度相関し,個体によって頻度が高いもの(胞子頻度84%・配偶体頻度87%)から低いもの(1%,1%)までがあることがわかった.これから,ハコネシケシシダが無配生殖様式の成立の程度が高い集団と低い集団を含む複合体であるとが示唆される. 5.無配生殖の進化について,胞子形成と有性生殖それぞれで変異が起こって非減数胞子形成と無配生殖(狭義)成立が導かれるという複数遺伝子が関与したとする説と,非減数胞子形成にかかわる変異が起こることによって無配生殖(狭義)成立が導かれるという複数遺伝子がよしたとする説と非減数胞子形成にかかわる変異が起こることによって無配生殖(狭義)が誘導されやすくなるとする1遺伝子関与説が有力である.ハコネシケシシダについての本研究の結果は,前者の説を支持する.
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