研究概要 |
赤外エバネセント光を利用したシリコンウェハ加工表面層のナノ欠陥計測法に関して,本研究の遂行によって得られた主な成果を以下にまとめる. (1)シリコンウェハ加工表面赤外エバネセント場の解析モデルおよびマクスウエルの微分方程式を差分化し,時間領域で解く方法である有限差分時間領域法FDTD(Finite Difference Time Domain method)法を適用することより,赤外エバネセント場の3次元的分布を解析することを可能とする計算機シミュレータの構築を行った. (2)FDTD法によるシミュレーションによって,エバネッセント光を表現させ,実際の現象を再現することに成功し,近接場光学現象の解析にFDTD法を用いることが可能であることを示した. (3)境界条件の設定に伴う計算誤差を低減する新たな境界条件の検討を行い,FDTD法に基づいた赤外エバネセント場・解析シミュレータを高精度化するための再構築を行った.その結果,これまでノイズ成分に埋もれてしまっていた,ナノメートルサイズの欠陥によって乱された微弱な赤外エバネセント光の挙動を詳細に解析することが可能になった. (4)シリコンウェハ加工表面層のナノ欠陥によって近接場に及ぼされた影響を,プローブを用いて検出することにより,欠陥の検出が可能であることを示した. (5)プローブ走査により得られた応答の検出波形を解析することで,欠陥の位置,存在形態(凹凸および表面か内部かなど)およびサイズを特定することが可能であることを明らかにした. (6)検出効率を増大させる方法として,プローブについて検討した結果,YAGレーザ(波長1064nm)を光源とした場合,Siプローブよりも吸収の少ないSiO2プローブのほうが欠陥検出効率の向上に有利であることを明らかにした.
|