研究概要 |
本研究の最終目的は,分子の付着・整列現象を原理とした平滑面創成を可能とする分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy,MBE)技術応用によって,単結晶シリコン(Si)基板上に単結晶炭化シリコン(SiC)平滑面の作製技術の確立することである.しかし,現状では,そのメカニズムやプロセスについては不明な点が多く,最適な加工条件の選択といった加工技術の確立には至っていない.そこで,本研究ではSiC平滑面の創成過程の観察ならびに加工条件と創成されるSiCの組成および幾何形状の関係を明らかにすることでSiC平滑面の創成メカニズムを解析している.昨年度は,SiC成長時の基板温度がSiC成膜層の幾何形状,結晶性および組成に及ぼす影響を実験的に明らかにし,成長過程を解明する手がかりを得た.本年度は,主として,単位時間あたりに基板に入射する分子数が創成面性状に及ぼす影響を実験により解明した.実験は,分子線として,Siは電子線(EB)により固体Siを溶融蒸発させたものを,Cはアセチレンガスを用い,成長時に,単位時間に基板に入射するSi分子数,C分子数およびその比を変化させた.総成膜量や基板温度などのその他の条件は同一とした.その結果,全ての実験条件で単結晶SiCの創成が確認できたが,入射分子数比(C/Si)が8〜15の範囲から外れた実験条件では,結晶性が悪くなっていた.また,実験条件によらず,3次元核成長の核であると考えられる表面の凹凸が観察されたが,例えば,同じ入射分子数比でも,入射分子数が増加するにつれ,核の半径が大きくなっていた.さらに,SiCの組成比は,どの実験条件でも,おおよそ一定であった.以上を総合すると,単結晶SiC平滑面創成を実現する基板温度や分子線入射量などの最適な加工条件の選択指針が明確化できた.
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