研究概要 |
管内に生じる音響定在波は,古くから良く知られた物理現象であり,これに関連する問題の多くは線形音響理論に基づき説明されてきた.しかし,管内に生じる有限振幅定在波およびそれに伴って生じる非線形現象については,いまだ未解明な問題が残されている.最近,音響定在波の熱流体新技術への応用が検討され,熱音響冷凍機や音響圧縮機などの開発が試みられている.さらに,音響定在波が他の熱流体現象と結合して新たな現象を生じることや,流れ場や熱移動の制御作用をもたらす可能性などが示されてきた.本研究では,これら音響定在波の熱流体新技術現象への応用を前提としたときに問題となる管内有限振幅波動現象の詳細について検討した. 有限振幅定在波の応用においては,振幅の増加とともに現れる管内伝ぱ衝撃波が本質的な問題となり,熱音響効果の低減や圧力変動振幅増加割合の減少などをもたらす音響飽和を生じる.音響飽和を防ぎ,大振幅のショックレス定在波状態を実現するには,管軸方向断面縮小管を用いることが考えられている.断面縮小管内のショックレス定在波の特性は,断面変化の関数形や断面縮小率などで定まる管形状に依存する.断面積が変化する音波伝送管の基本形状である指数関数状断面縮小管を基準に,円錐状管,直管を加えて,管内波動現象についての数値解析,実験検証を行った.その結果,断面縮小管内における定在波モードの現れ方や,ショックレス定在波を実現する条件などを明らかにするとともに,得られる圧力変動振幅値と実測値との比較から数値解析による現象予測の妥当性を示した.これらの結果から,断面縮小管を用いた音響圧縮機の基本動作特性の予測を行った. さらに,熱対流場に重なる有限振幅定在波の影響について検討し,複合現象における対流速度場および密度場を同時に計測することにより,その基本的特性を明らかにした.その結果,音響流が熱対流におよぼす影響に加え,熱音響効果が熱対流場の温度分布に大きく影響することが明らかになった. 以上の結果は,有限振幅定在波のさまざまな熱流体新技術への応用に対する有用な基礎的知見を与える.
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