研究分担者 |
山口 一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20166622)
加藤 洋治 東洋大学, 工学部, 教授 (00010695)
田村 義昭 (田村 善昭) 東京大学, インテリジェント・モデリング・ラボラトリー, 助教授 (40217203)
杉山 和靖 東京大学, インテリジェント・モデリング・ラボラトリー, 研究員
市川 保正 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40134473)
高木 周 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (30272371)
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研究概要 |
液体中に存在する微小な空気泡が,周囲圧力の変動に伴い,急激に成長・崩壊するキャビテーション現象は,流体機械・機器の性能に大きな影響を与える.中でもポンプインペラ,舶用プロペラなど流体機器壁近傍におけるキャビテーションの崩壊現象は,機器の壊食(エロージョン)をもたらし,機器の性能に影響を与えるだけでなく,重大な事故にもつながり得る.エロージョンに関しては,これまで,単一気泡の崩壊による働撃波の発生,マイクロジェットの生成による働撃圧などが議論されてきたが,これらの圧力は実際のキャビテーションで計測されるものに比べてはるかに小さく,エロージョンのメカニズムを説明するには至っていない.一方,流体機器内で発生するキャビテーションの多くは,気泡が集合した気泡雲の状態で存在し,そのようなクラウドキャビテーションは壊食性が強く,クラウド崩壊時には,数GPaの高い圧力が発生することが実験的に分かっている.本研究では,このようなクラウドキャビテーションの動力学を解析するため,ミクロスケールの現象である個々の気泡内部の熱現象,メゾスケールの現象である気泡の配置,マクロスケールの現象であるクラウド内部の圧力波の挙動の関係について,スケール間の干渉を合理的に組み合わせた多重スケール解析を用いて解析を行った. 解析に用いられた計算手法は,松本らにより独自に開発されたものである.この手法では,ミクロスケールの現象として,個々の気泡内部の熱・物質輸送を厳密に考慮し,気泡の体積変化および並進運動の方程式を精度良く計算する.一方,マクロの式としては,気泡を分散体として含む液体に対する質量,運動量の平均化方程式を解き,ミクロスケールを記述する個々の気泡に関する方程式と合理的にカップリングさせる.得られた計算結果より,気泡間相互作用により,クラウド崩壊時には単一気泡の崩壊時よりも,はるかに高い衝撃圧がクラウド中心近傍に発生することが示され,実験による高い圧力の発生のメカニズムに対して知見が得られた.さらに,液相部には張力を含む高周波の圧力変動が生じることなどが明らかとなった.
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