研究概要 |
本研究では,トンネルデバイスを作製するための装置の開発を行うとともに,トンネル素子の実現に必要な強磁性と反強磁性膜の交換結合などの要素技術についても詳細な検討を行った。また,トンネル接合の形成プロセスについても検討した。 (1)二重トンネル接合は,4から5種類の金属を積層することによって構成される。また,マスクパターンの用いたプロセスが必要となる。このため,5元のマグネトロンスパッタリング装置に,超高真空中で交換可能なメタルマスク交換機構を取り付け,5層構成のトンネル素子の試作が可能なシステムを作製した。 (2)Gaイオンをベースとした集束イオンビーム加工装置を用いて,CoFeB薄膜の微細加工を行い,1×1μm^2から0.2×0.2μm^2の磁性ドットを作製してその磁区パターンを走査型磁気力顕微鏡により観察した。 (3)安定な反強磁性/強磁性交換結合二層膜の作製プロセスを検討するために,NiFe/MnIr2層膜を作製し,その交換異方性を測定した。その結果,交換異方性は,基板-ターゲット間距離に大きく依存しており,この距離を120mmとすることによって,MnIr層厚を4nm程度まで薄膜化できることが分かった。 (4)NiFe/Al_2O_3/NiFe/MnIrという構成のトンネル素子をメタルマスクを用いて作製した。Al層の酸化方法をいろいろ試みたところ,Alターゲットを酸素中で順方向スパッタしたプラズマ中にAl層を配置する方法でトンネル接合が形成できることが分かった。ただ,トンネル抵抗変化率としては,0.3%程度の小さな値しか得られず・接合の形成方法を今後さらに改善する必要がある。
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