研究概要 |
水熱法により作成したPZT膜を用いたトランスデューサを,共振周波数で大振幅動作させたときの特性について検討した。その結果水熱法により作成したPZT膜は振動特性の線形性と最大振動速度に関して優れた特性を有していることを示した。バルク材では共振周波数付近で非線形な周波数応答を示すが,薄膜を用いた振動子では大振幅動作時に於いても優れた線形特性を示した。幅1mm長さ7.8mm厚さ1.2mmの縦振動子に関して振動特性を測定したところ,15回の成膜プロセスを行うことで作製した38μmのPZT膜厚を用いた素子において,145Vp-pの駆動電圧で最大振動速度2.24m/secを得た。この値はハイパワーのアプリケーション用バルク材料の2倍以上であった。そして,圧電結晶材料であるニオブ酸リチウムの3m/secに迫る値であることから,水熱法によるPZT膜が,多結晶材料であるために優れた大振幅振動特性を有しているものと推察された。 また,チタン基板の洗浄プロセスを種々検討することにより,圧電定数がこれまでの2倍程度に改善され,プロセスの改良により,成膜されたPZTの特性が向上することを確認した。新たな成膜プロセスとして,電気化学的手法を用いて成膜を試みたところ,これまでになく短い時間に大量の成膜が行われることを確認した。しかし,その詳細については今後さらに検討を要し,成分の制御なども検討を行う必要がある。また,音響化学的手法に関しても検討を行ったが,今のところ顕著な成膜プロセスの改善には至っていないが,さまざまな要因が関係することが明らかになった。
|