研究概要 |
紙幣の新旧識別に関して,銀行では人間の目視による選別が主として行われ,人手を介した処理プロセスが必要な点で,この作業はOA化の進展の阻害要因となっている.本研究の目的は,紙幣の金種を識別していた従来の紙幣識別機で発生する紙幣固有の音に着目し,2段階適応ディジタルフィルタとニューラルネットワークで紙幣識別機で発生する音響データの解析によって,紙幣の疲弊度を推定し,紙幣の金種識別と新旧識別を同時に可能にする紙幣識別の高度自動化を図り,高度情報化社会におけるOA化の発展を推進することである.このために,以下の項目について研究した。 (1)紙幣音の特徴量の抽出法の改善とネットワーク最適化の検討: 前年の研究で必要になる紙幣音の特徴量として,スペクトルおよびケプストラムを用いたが,これらのすべての情報を利用すると,ニューラルネットワークの規模が拡大し,学習の収束性およびニューラルネットワークの汎化能力などの点で好ましくない.そこで,遺伝的アルゴリズムの最適化能力を用いて,ニューラルネットワークの入力として使用する紙幣音の特徴量の選択法および規模の決定を行った. (2)紙幣新旧識別システムの規模の縮小化とモジュール化: 前年度に提案した紙幣音に基づいた紙幣の疲弊度推定システムを用いて,実際の紙幣識別機に搭載可能なシステムとするために,全体システムを紙幣音計測部・適応ディタルフィルタ部・疲弊度推定部・新旧識別部に分割し,それぞれの部分のダウンサイジングを図り,独立したハードウエアで実現可能なモジュール化構造とした.
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