研究概要 |
鉄鋼中の硫化物として重要であるTiSとCrSの形態を支配する因子とその生成機構を明らかにするためにCALPHAD法による熱力学的解析を行い次の結果を得た。 1.Fe-TiS3元系では,微細球状,粗大球状,棒状,板状の4種類の形態が観測された。これらは,硫化物中のTi/S比の大小による生成過程の違いによってその形態が支配される。 2.Fe-Ti-S3元系に,硫化物形成能の強いZr,Mnを添付すると,Fe-XS(X=Zr,Mn)擬元系状態図に従って硫化物の形態が変化する。即ち共晶系の状態図では,棒状の硫化物が生成し,偏晶系では球状になる。またCを添加すると炭硫化物が生成するために形態は大きく変化する。 3.鋼中TiSの溶解度積および生成自由エネルギーは次のように決定された。log[Ti]γ[S]γ=7.74-17820/T,log[Ti]α,δ[S]α,δ=8.07-17171/T log[Ti]_<liq>[S]_<liq>=7.09-12447/T,ΔG^f_<TiS>=-455410+132.95T J/mol 4.Fe-Cr-S3元系では,板状,微細球状,粗大球状の3種類の形態が観察される。これらは,硫化物中のCr/S比の大小による生成過程の違いによってその形態に変化が現れる。また,微細球状のCrSの生成は,再融反応によって生ずるものと考える。 5.Fe-Cr-S3元系にTi,Mnを添加すると,Fe-XS(X=Zr,Mn)擬2元系状態図に従って,その形態が変化する。またZrを添加すると硫化物の形態は酸化物に大きく影響される。 6.Fr-Cr-S系の状態図の熱力学的解析を行った。鋼中におけるCrSの固溶度はCr濃度によって変化するが,1%程度のCr濃度では次の様に表せる。log[Cr][S]_<liq>=3.89-4500/T,log[Cr][S]δ=3.35-6550/T log[Cr][S]γ=3.43-7307/T,log[Cr][S]α=5.32-9068/T
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