研究概要 |
前年度に引き続き,鉄粉にホウ素と炭素を添加して三元共晶液相を発生させ,銅添加鋼に代わる機械部品用鋼の開発を目指した. 得られた結果を以下にまとめる. (1)鉄粉にホウ素と炭素を添加した試料を加熱すると,三元共晶相が1410K以上の温度で現れるより先に,1390K付近から明らかにマンガンを含むFe-B-C-Mn系の化合物粒子が現れる.このマンガンは鉄粉に0.17mass%含まれているものであるが,粒子の出現は材質改善にはほとんど寄与しない. (2)ホウ素と炭素を添加した焼結鋼の引っ張り強さは,ホウ素添加量で決まる三元共晶液相の発生両よりも,1.0mass%添加した炭素によって生じるパーライトとフェライトの量に強く依存しているが,ホウ素が0.07mass%またはそれ以上になると,破面上に原料黒鉛の残留がみられる. (3)調査した一連の焼結鋼をFe-1.0mass%Cの焼結炭素鋼としてみると,ホウ素を加えない場合は全体がパーライトからなる共晶鋼に相当するマトリックスになるが,それに炭素とともにホウ素を加えていくとき,ほぼ0.1mass%以下の低いホウ素添加量の範囲では,機械的特性は主にホウ素添加量の関数であり,効果的な添加量は0.05〜0.07mass%である. (4)Fe-0.05mass%B-1.0mass%C焼結鋼は,1440Kで焼結すると旧液相およびパーライトに加えて少量のフェライトを含む組織になるため,機械部品として良い特性を示し,さらに焼き入れと低温焼き戻しの熱処理によって伸びは低下するが引っ張り強さを倍増することができる.
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