研究概要 |
ナノメーターサイズ粒子の均一分散を目的として,高温における粒子の凝集,析出挙動の直接観察を行った結果,以下の知見を得た. 1.固体,液体酸化物粒子間に働く凝集力を直接観察により定量的に測定した結果,凝集力は粒子径,粒子形状,溶鋼との接触角の影響を大きく受けることが明らかになった.すなわち,同じ大きさの粒子であってもアルミナ粒子間の凝集力は大きく,マグネシア粒子間のそれは非常に小さい.また,アルミナのような不定形粒子間の凝集力は大きいが,液体のような球状粒子間の凝集力は小さい.さらに,粒子間のキャピラリー効果に関する理論を適用することにより,凝集力を定量的に計算でき,実験値とも良く一致した.これらの知見により,酸化物粒子の微細分散に向けた指針を得た. 2.直接観察および数値計算により,凝固界面でのマランゴニ対流について調査研究を行った.その結果,Fe-O系ではThermocapillary力だけでなくSolutocapillary力が重要な役割を演じておりO濃度により流れのパターンが大きく異なることを明らかにした. 3.凝固界面における酸化物粒子の捕捉挙動について直接観察により調査を行った.その結果,粒子に関する押出し/捕捉は凝固界面の移動速度と酸化物粒子径により支配されることを確認した.また,凝固直後の結晶粒界移動に関し酸化物粒子によるヒンニング作用が隣接した粒界にも影響を及ぼすことを確認した. 4.MnS析出に対する相変態挙動の影響について,Fe-Si合金を用いて直接観察により検討を行った.その結果,相変態挙動に応じてMnS析出個数や析出温度が大きく変化することを明らかにした.また,MnSの析出および成長挙動に対する母相の影響についても検討を行い,δ相ではMnSの析出個数が多く,成長速度が大きいことを明らかにした.
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