研究概要 |
液相線以上で2液分相を生じる系では、融液の保持温度・時間を制御することで分相組織の組成や大きさを変化させることが可能となる。本研究では、その代表的な例であるTiO_2-SiO_2系において遷移金属を含む適切な組成を選択し、この系の分相融液の急冷・熱処理・選択溶解等により、酸化物半導体微粒子とガラスマトリックスを複合化した可視光応答可能な光触媒材料を作製することを目的とした。 これまでの研究で得られた、40TiO_2-60SiO_2(mass%)組成の分相融液から急冷および選択溶解法により作製した高光触媒活性のアナターゼ相チタニア粉体に、遷移金属であるFe, Cr, V, NbをTiに対して0.1,0.5,1.0mass%になるように添加して、同様の方法で多孔質チタニア粉体を得た。得られた試料のチタニア結晶相をXRDで調査した。また500W超高圧水銀ランプ照射下での20vol%エタノール水溶液からの脱水素反応により生成する水素量により評価した。 遷移金属を添加した試料のチタニア結晶相は、いずれの試料でも遷移金属を含まない試料と比較してアナターゼ相の割合が低下していることがわかった。しかし添加量による変化は明確でなかった。エタノール水溶液からの水素発生は可視光では認められなかったが、紫外光照射下では水素が発生した。遷移金属を含む各試料の水素発生速度(光照射10時間の平均値)は、含まない試料(ca.1.5mmol・g^<-1>・h^<-1>)と比較して、1/10〜1/500に低下し、添加量が多いほど低下率が大きくなる傾向を示した。試料のアナターゼ→ルチル相変化の程度はそれほど大きくないことから、光触媒特性の劣化の原因は、遷移金属イオンが光励起された電子・正孔の再結合サイトとして働いたためであると考えられる。
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