研究概要 |
本研究は,ビニル化合物のカチオン重合において,これまで不可能であると考えられてきた「水中でのカチオン重合」および「立体規則性カチオン重合」を,主として触媒であるルイス酸の設計の基づいて実現することを目的とした。 ●水中でのカチオン重合 カチオン重合では,反応中間体が炭素カチオンあるいは触媒のルイス酸が水と容易に反応して失活するため,水中でのカチオン重合は不可能であると考えられてきた。しかし,本研究では希土類金属塩などの水中でも安定なルイス酸を用いて,下記の諸点を明らかとした。 (a)p-アルコキシスチレンの水中でのカチオン重合 (1)希土類金属および銅や亜鉛のトリフルオロメタンスルホン酸塩による水中での懸濁・分散カチオン重合 (2)これらのルイス酸と界面活性化剤による水中での乳化カチオン重合 (3)これらの重合における分子量の精密制御 (b)p-ヒドロキシスチレンの直接リビングカチオン重合 (4)三フッ化ホウ素をルイス酸とし,過剰の水を含むアセトニトリル溶媒中でのリビングカチオン重合 (5)これらのカチオン重合による,ブロックおよびランダム共重合体の精密合成 ●立体規則性カチオン重合 カチオン重合では,生長末端付近の立体化学の制御が不明確であり,立体規則性重合は困難であると考えれてきた。本研究では,ルイス酸触媒がこれを可能とすると考え,ビニルエーテル類の重合にいおいて,下記の諸点を明らかとした。 (1)2,6-位置換フェノキシ基を持つ塩化チタンをルイス酸触媒とするイソブチルおよびイソプロピルビニルエーテルの立体規則性カチオン重合(イソタクト選択性>90%(二連子)) (2)かさ高いアルキル基を持つリン酸誘導体を開始剤とする立体規則性カチオン重合
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