研究概要 |
本研究では物理ゲル形成に伴う系の分子ダイナミク変化を詳細に検討するために多糖,棒状ポリペプチド等の生体高分子について,^<13>C-NMR,^2H-NMR,金属イオンのESR,DSC測定を行った。 1)金属イオンと特異な相互作用を行うアルギン酸,ゲランガムについて,常磁性2価金属イオンであるMn(II)との相互作用の影響を調べた。Mn(II)添加により^<13>C-NMRスペクトルはアルギン酸,ゲランガムのカルボキシル基近傍のカーボンピークのみが極端にブロードニングし,Mn(II)がこれらの基と選択的に結合していることが示された。また,解離基,その周囲の水分子との相互作用がMn(II)の運動性を低下させMn(II)ESRスペクトルも著しい強度減少,線形変化を起こした。線形解析から,Mn(II)には自由,弱い束縛,強い束縛の3状態存在することがわかった。これらの現象を利用しMn(II)濃度増加による系の状態変化を観測した結果,系はゾル,粘凋ゾル,ゲルの3段階で変化し各段階でMn(II)3状態の相対比が異なることがわかった。 2)棒状ポリペプチドゲルの異方構造をスピンラベル ポリ(γ-ベンジルL-グルタメート)(PBLG),ポリ(L-ロイシン)(PLL)を用いESR測定により調べた。ベンゼン溶液中では強い分子会合性を反映し,PBLG,PLLともにゲル状態で高いオーダーパラメータ値を示した。ベンジルアルコール溶液系においても同様であった。スピンラベルPLLにPBLGを混合させゲルの安定性を調べたところ数%以上でPLLはゲル形成能を失った。しかし,長時間熱処理により安定なゲル形成が新たに観測され異方ゲルの構造に関し興味ある知見が得られた。重水素NMR緩和から溶媒のダイナミクスを調べたところ,ゲル状態で架橋領域に束縛された溶媒は純粋の溶媒に比べ2桁遅い運動状態にあるがことがわかった。
|