研究概要 |
低品位ではあるが普遍的に産出する大規模硫化物鉱床の金回収が世界的に重要な鉱業的課題となっている。イランの大規模斑岩銅鉱床であるサーチェスメ鉱床の硫化物鉱石を事例として,鉱石中の金の賦存特性,鉱石分離選別プロセスにおける金の挙動,さらに最適分離回収システムについて検討を行い,以下の結果を得た。 1)サーチェスメ鉱床の金の含有量について,鉱石試料(Cu>0.25%鉱石帯)のICP分析の結果,全試料,初生的鉱石,二次富化鉱石それぞれの平均Au品位は60.3,58.2,70.7(PPb)であり,鉱石中の金品位は当初考えられていたよりも全体に低い値を示すことが明らかとなった。現在開発および探査中の部分は金の含有量の比較的低いタイプの斑岩銅鉱床に相当することが分かった。 2)元鉱,精鉱,尾鉱試料中の金の挙動について,(1)元鉱の平均金品位は0.1ppm以下であり,浮選における金の挙動は必ずしも銅のそれとは対応しないこと,(2)平均して金の約44%が銅・モリブデン精鉱中に回収され,残りは尾鉱に含まれていること,(3)元鉱および精鉱中の銅と金は,鉄,モリブデン,銀,砒素,亜鉛,鉛などと正の相閧を有することが明らかにされた。 3)硫化物鉱石中の金の存在状態としてvisible, invisible, encapsulatedの三形態で存在することを明らかにし,diagnostic leachingによりそれら三形態の金の定量を行った。そして,尾鉱中には約80%の金がvisibleな形態で含まれており,その多くは黄鉄鉱に含まれていることを見出した。 4)尾鉱の硫化物バルク浮選の精鉱に対し鉄酸化細菌によるバイオリーチングと青化処理が行われ,1週間および2週間のバイオリーチング処理物に対しそれぞれ約61%と70%の金回収率が示された。すなわち,金の回収率を向上させるためには処理工程中の尾鉱の再処理が不可欠であり,そして再処理工程ではバイオリーチングと青化処理を組み合わせた回収システムが有効であることが示された。
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