研究概要 |
前年度,酸化ステロールをGC-MSを用いて分析する方法を確立した.この方法を用いて,アポE欠損マウスとその野生型であるC57BL/6マウスの血清,肝臓及び動脈の酸化ステロールを分析し,アポE欠損マウスはその野生型と比較して,血清並びに動脈に多量の酸化ステロールが沈着していることを明らかにした.また,コレステロール酸化物を調製してアポE欠損マウスに給餌すると,血清と肝臓にコレステロール酸化物が蓄積すること,しかし,動脈へのその蓄積は僅かであることを観察した.本年度は,コレステロール酸化物のリンパへの輸送を胸管リンパカニュウレーションラットを用いて検討するとともに,食用油脂の摂取と動脈におけるコレステロール酸化物着との関係ならびに植物ステロール酸化物の吸収について検討した.その結果,コレステロール酸化物は,摂食後6時間でいずれもリンパ液中で回収されること,特に,α-エポキシコレステロールの回収率はコレステロールにほぼ匹敵し,次いで,7-ケトコレステロール,コレステタントリオール,7β-,7α-ヒドロキシコレステロールの順に回収されることを明らかにした.これらの結果から,食事に含まれるコレステロール酸化物は程度の差はあるがいずれも吸収され,体内へ輸送されることが実証された.一方,摂取油脂の違い(リノール酸およびα-リノレン酸に富む油脂)は動脈における酸化ステロールの沈着量に影響しなかった.食品中には植物ステロール酸化物が含まれることから,代表的な植物ステロールであるβ-シトステロールとカンペステロールの酸化物を有機合成し,それらの吸収・輸送ならびに動脈硬化への影響について現在検討中である.
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