研究分担者 |
大釜 敏正 千葉大学, 教育学部, 教授 (60093209)
則元 京 京都大学, 木質科学研究所, 所長 (20027163)
佐野 千絵 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 保存科学部, 生物研究室長 (40215885)
瀬岡 良雄 富士写真フィルム(株), 足柄研究所, 主任研究員
水流 徹 東京工業大学, 工学部, 教授 (20092562)
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研究概要 |
博物館の収蔵庫は,安定した相対湿度を得るために内装材料に吸放湿性の高い木材や,それに近い性能を有した材料が使用されることが多い.わが国においてこうした伝統は古く,その代表的なものが正倉院の校倉宝庫である.収蔵庫内の収納物は木製の箱に収められ,2重あるいは3重の木材に包まれる.本研究によって,校倉および内部に納められた唐櫃内部の温湿度を,年間を通じて正確に記録することができた.その意義は誠に大きく,木製空間を用いた伝統的な保存環境の状態を改めて認識することが可能になった。 現代の収蔵庫は,ファイバーボードなどの人造木材,セラミックス系調湿ボードなど調湿機能をもつと考えられる内装材を使用したものや,コンクリートの躯体の表面に内装材料を張り込まない状態の収蔵庫など,様々なタイプのものが存在する.一般的には,さらに空調設備を導入することによって積極的な温湿度調節を図ることが多い.こうした様々な収蔵庫に対しても,それら内部の温湿度環境の測定を実施し,内装材に使用される調湿材と空調設備が温湿度環境に与える効果を検証するための多くの事実を把握することができた. 木材その他の調湿材を多用した収蔵庫において,有機酸,アルデヒド類,窒素酸化物,アンモニアなどに関する濃度測定を実施しながら,収蔵庫とその内部の空気成分との関係について検討した.外気中の二酸化窒素に対する一酸化窒素の割合が,木材を多用した収蔵庫内部では逆転して一酸化窒素の割合が増大するため,木材の存在が影響を及ぼしていると推定される.
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