配分額 *注記 |
14,900千円 (直接経費: 14,900千円)
2001年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
2000年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1999年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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研究概要 |
本研究では,スチールヘッドマス(Oncorhynchus mykiss)などの魚類の未受精卵に存在するラムノース結合特異性レクチン(RBL)の分子構造,組織分布及び生物学的機能の解明を目指した。先ず,スチールヘッドマスから3種類のラムノース結合特異性レクチン(STL1〜3)を単離し,それらの構造を解析の結果,魚類卵には新規動物レクチンファミリーが存在することを証明した。STL1は雌雄の肝臓で特異的に発現し,血流を介して免疫関連組織と卵巣に移動すること,一方,STL2とSTL3は卵巣でのみ発現することをRT-PCR及びin situハイブリダイゼーションによらて明らかにした。STLのグラム陰性及び陽性細菌に対する結合活性を調べ,STLはO抗原の構造を識別してリポ多糖(LPS)に結合することが分かった。また,グラム陽性細菌ではリポテイコ酸に結合性を示した。グラム陰性菌である大腸菌やせっそう病菌などの魚病細菌はSTLによって凝集され,ラムノースの添加によって凝集阻害がみられた。LPSをセンサーチップに固定化した表面プラスモン共鳴スペクトルでも相互作用を解析した。さらにSTLのシグナルペプチドを含む翻訳領域をpcDL-SRalpha296ベクターのプロモーター下流に導入し,サル腎臓細胞COS7で発現させた。タンデムリピート部のドメインを個別に発現させても糖鎖認識結合能を保持していたことから,ドメインが糖鎖認識結合ドメインであることを確認した。卵巣及び卵 成熟の各ステージでの組織標本を作製し,組織免疫染色,共焦点レーザー蛍光顕微鏡でSTLの動態を明らかにした。シロサケ卵からSTLに相当する3種類のレクチン(CSL1〜3)を単離して構造決定する一`方,アメマス卵からはSTL1とSTL3に対応するWCL1とWCL3のみを単離して構造を解析した。サーザンブロットではSTL2様遣伝子が検出されたが,mRNAは検出できず,これらレクチンの分子進化が異なることを示した。マルタ,ウグイ,アユ及びニシンなどの,サケ科以外の魚種における新規動物レクチンファミリーの存在も確認し,それらの1次構造等の生化学的性状を解析した。以上の結果から,特異な分子進化を遂げた魚卵レクチンは,組織特異的に発現が制御され,生体防御及び分化発生等で重要な生物機能を果たしていることが明らかになった
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