研究概要 |
動物組織に網羅されている毛細血管系を制御することは再生医学の重要な研究課題である。喧伝されている「血管新生抑制による腫瘍の兵糧攻め作戦」を例に取るまでもなく、組織形成にとって血管新生は重要である。ラミニンは細胞外マトリックスの主要な糖タンパク質で、組織細胞の遊走、増殖や分化に強く作用して組織形成の多様な局面で働いている。ジスルフィド架橋されたα鎖、β鎖とγ鎖が会合して、3本の短腕と1本の長腕を持つ十字架構造をしている。ここで研究したラミニンα4は、、血管を作る内皮細胞がラミニン8(α4β1γ1)の形で分泌している。主要な発表論文であるYamaguchi et al.(2000)J.Biol.Chem.,275,29458-29465では、α4鎖のC-末端にあるLG1-LG5の組換え体をCHO細胞で大量発現させて、ここに高及び低親和性のヘパリン結合領域があることを示した。すなわち、α4鎖LG1-LG5のキモトリプシン消化でα4鎖LG2-LG3を含む41kDaのヘパリン低親和性断片と44と39kDaのα4鎖LG4-LG5を含む高親和性断片を得た。35と23kDa断片へのさらなる断片化で、α4鎖LG4に強いヘパリン結合領域を特定した。さらに、α4鎖LG4の高親和性にはAHGRLのアミノ酸配列が重要であることも示した。すでに結晶解析されているα2鎖LG4領域の立体構造に重ね合わせて、この配列はE/Fループとしてカルシウム結合部位とは反対側に突出していることも示した。Talts(J.Biol.Chem.,in press(2000))らの最近の報告と総合すると、α4鎖のこの領域でのラミニン8(α4β1γ1)の超分子自己会合が毛細血管と組織細胞(腫瘍細胞)との接触構造を構築している可能性が示唆された。これらの知見は、今後の抗腫瘍薬剤の開発に重要な基礎を与えた。
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