研究概要 |
形質膜は均質な構造ではなく,局所的に分化したドメインが存在する.特に脂質の性質に基づいて形成されるラフトとカベオラは近縁の機能ドメインであり,シグナル伝達,コレステロール輸送などに関与すると考えられている.我々はこれらのドメインの性質を明らかにする目的で研究を行った. 1)カベオラの主要な構成成分であるカベオリン-1のアイソフォーム(α,β)の分子的性質を明らかにする目的で,免疫電顕法で内在性のカベオラを持つ細胞を検索したところ,深い陥凹におけるα/βの比率が浅い陥凹に比較して有意に大きいことが明らかになった.また既知のカベオリン分子を発現せず,カベオラを持たない培養細胞にカベオリン-1を発現させると,αアイソフォームはβアイソフォームに比較してより高い陥凹形成能を示した.さらにカベオリン-1が単独で発現する場合に比較して,カベオリン-1,2の両方を共発現する細胞では深い陥凹がはるかに効率的に形成された.これらの結果は,カベオラの陥凹度はコーテッドピットとは異なる機序で制御されている可能性を示唆するとともに,これまで意義の明らかでなかったカベオリン-2の機能を明らかにした. 2)14番目のチロシン残基が燐酸化されたカベオリン-1を特異的に認識する抗体を作成し,燐酸化カベオリン-1の局在と生化学的特徴を検討した.その結果,v-Srcの発現によってカベオリン-1が分子内の複数の箇所でチロシン燐酸化を受け,その結果,カベオラの平坦化,およびカベオラの小胞化,凝集,融合が起こることが明らかになった。 3)カベオリン-1のアイソフォームが,従来報告されていた翻訳開始点の違いによって生じるだけでなく,異なるmRNAに基づいて産生されることを示し,転写レベルで制御が行われる可能性を示唆した.
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