研究概要 |
3種類のG蛋白共役型スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体EDG1,EDG3,AGR16(=EDG5)の生物活性、その細胞内情報伝達機構、受容体間の機能上の相異、動物個体レベルでのS1P受容体の役割の解析に取り組んだ。 1.EDG1,EDG3,EDG5を発現するCHO株、K562株、HEL株を樹立し、EDG1,3,5がS1P特異的受容体であり、それぞれ異なる情報伝達能を有することを見出した。 2.EDG1,EDG3はS1Pに対する化学遊走を媒介するのに対して、EDG5は化学遊走を抑制した。 3.S1Pは血管内皮の遊走を誘導し、三次元ゲル内培養下で管腔構造の形成を引き起こした。一方、血管平滑筋細胞では遊走を抑制した。また、血管平滑筋細胞ではPDGF-B遺伝子発現を誘導した。 4.EDG1,EDG3はGi,PI3K依存的に低分子量G蛋白質Racを活性化し、これが遊走に必要であった。一方、EDG5は他の化学遊走因子によるRac活性化を強く抑制した。EDG5はPI3K以後に作用し、おそらくGTPase活性化因子(GAP)の活性化を介してRacを抑制していると結論された。EDG5はRacを抑制することが見出された最初の受容体である。 5.EDG5のノックアウトマウスを作製中である。既にキメラマウスを作出し、生殖系列細胞に変異を導入したヘテロマウスを樹立する段階にある。 6.スフィンゴシンキナーゼノックアウトマウスのターゲティングベクターの構築を完了した。
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