配分額 *注記 |
10,600千円 (直接経費: 10,600千円)
2001年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2000年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1999年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
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研究概要 |
ATLL(成人性T細胞性白血病、リンパ腫)のウイルスの関与と遺伝子変化を臨床分子病理学的に検索した。欧米では、非ホジキン悪性リンパ腫の多くのものがB細胞性リンパ腫であるが、本邦、特に九州では、T細胞性リンパ腫が多く、ATLLが多いためと考えられている。 572例のリンパ節性のT細胞性リンパ腫のHTLV-Iプロウイルスの検索で、3群に分けられた。(A)クローナルなHTLV-Iブロウイルスのみられる、いわゆるATLL(adult T cell leukemia/lymphoma)(247例)、(B)ATLA陽性もしくはPCR法によりHTLV-Iウイルスが陽性だが、クローナルなHTLV-Iプロウイルスはみられない、いわゆるHTLV-Iキャリアに発生したと考えられるT細胞性リンパ腫(66例)、(C)ATLA陰性もしくは、PCR法によりHTLV-Iウイルスが陰性の、HTLV-Iと関係のないT細胞性リンパ腫(259例)に分けられた。明らかにA群は予後不良であった(Br J Haematol 1998,101:703-11)。 HTLV-Iの組込み部位をInverse-PCRとFISHを用い確認した。組込み部位はランダムであった。18例中15例のATLLで、HTLV-Iの組込みのある染色体に異常が見られた。とくに単純な染色体異常しかない症例2例では、HTLV-Iの組込みはこの単純な異常を示す染色体に見られ、HTLV-I組込みと染色体異常に関連がみられる傾向があった(Cancer Letters1998,132,203-12)。 腫瘍の免疫逃避機構の一部として、FasLに結合するDcR3(decoy receptor 3)が発見されている。HTLV-IおよびEBV(Epstein-Barr virus)ウイルス関連リンパ腫で検索したところ7例のATLLでDcR3の遺伝子増幅、発現が見られた。またEBV関連リンパ腫でもDcR3の遺伝子増幅、発現が見られた。一方コントロールと使用した反応性リンパ節、およびウイルスの関与していないB細胞性リンパ腫では、DcR3の遺伝子増幅、発現はほとんど見られなかった(Cancer Letter,2000,160,89-97)。 チェックポイント異常と発癌との関係をみるため、RT-PCRを使用しチェックポイント蛋白のBUB-1のポイントミュテーションで遺伝子配列を決定し検索した。hBUB1,hBUBR1のミュテーションが10例中5例のATLLみられた。一方、B細胞性リンパ腫6例では1例にnon-sense mutationがみられたのみであった。また遺伝子不安定性を検索するため、Bax遺伝子、TGF-βII遺伝子の繰り返し配列の数の異常も検索したが、異常は見られなかった。(Cancer Lctters,2000,158,141-50)
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