研究概要 |
リンパ球のみを血管外移動させる血管HEV内皮細胞をマウス末梢リンパ節、腸管リンパ節から単離し、HEV特異的3'末端cDNAライブラリを作成した。各々の3'末端cDNAライブラリから約1,500クローンを塩基配列を決定し、他組織由来の約30種の3'末端cDNAライブラリで同定された塩基配列、およびESTに登録されている塩基配列と比較検討をした。その結果、正常の内皮細胞に比べてHEVに高発現が認められる分子として、mac25/TAF/PSF,SGP-2,DARC,leucine-rich α2glycoprotein,Ig-heptaなどが同定された。さらにHEVには、SLC,ELC,BLC,fractalkine,KC,lymphotactinなどのケモカインが遺伝子および蛋白質レベルで発現することが明らかになった。SLCは既にリンパ節へのT細胞の動員に必須であることが報告されているが、その他のケモカインについては報告がない。これらのケモカインはKCを除いてはいずれもサブセット特異的なリンパ球の遊走を誘導するものであり、種々のリンパ球サブセットをリンパ節内に動員するためには合目的性が高いものである。またこれとは別に、HEV上に発現するL-セレクチンリガンド上に硫酸基を転移する酵素として、La JollaのFukudaらと共に、上記のライブラリから新規GlcNAc-6-O-sulfotransferaseをクローニングすることに成功した。本酵素はL-セレクチンリガンドである6-sulfo sialyl Lewis Xの形成に必須の酵素であり、リンパ球がL-セレクチン依存的にリンパ節に動員されるための分子機序の一翼を担うものである。
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