配分額 *注記 |
13,400千円 (直接経費: 13,400千円)
2001年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2000年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1999年度: 8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
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研究概要 |
1 トランスジェニックマウスの発現解析 全長ウイルス遺伝子を導入したALB-HN2(アルブミンエンハンサー・プロモーター制御)とME-HN2(SRαプロモーター制御)のラインから、A44,A39,A48,S2,S5の5ラインを対象とし、解析を行った。コントロールマウスとして、A44,A48,S2作成時の同腹個体を用いた。肝臓におけるウイルスmRNAの発現は、A44の12ヶ月齢で1/17、21ヶ月齢で12/17、A39,A49では、12ヶ月齢より全個体で観察された。S2,S5では、どの組織も全く発現が見られなかった。発現したmRNAは、全長が保たれており、リアルタイム定量PCRの結果、50-4000コピー/μg total RNAの発現量であった。これは5-400細胞当たり1コピーに相当し、肝臓全体ではなく、局所的に発現していることが示された。肝組織中のコア抗原の定量を行ったが、測定限界5pg/mg liver protein以下であった。これは、ヒトC型慢性肝炎患者の肝臓と同等(5-30000コピー/μg total RNA)、もしくは多少少ない発現量に相当するものであった。他の強発現系トランスジェニックマウスに比べ、ウイルス遺伝子発現量はヒトに近いモデルと考えられた。 2 肝臓の組織学的病態解析 肝臓の組織学的解析で、血管周囲の炎症性細胞浸潤と巣状壊死が21ヶ月齢のA44,A39,A48に多く観察され、特に巣状壊死がA44,A39では有意に多かった。脂肪変性は全体に30-50%の個体に観察され、有意な上昇は見られなかった。肝組織の繊維化や腫瘍性病変、また血清トランスアミナーゼの上昇など、HCV mRNA発現特異的には観察されなかった。第3世代HCV抗体も全個体が陰性を示した。本来、アルブミンプロモーターによる発現制御のため、HCVタンパク質に対しては免疫寛容が予想された。しかし、生後2ヶ月齢まで、DNAメチル化による発現抑制が観察されたため、むしろHCVに対する免疫応答が期待された。結果的には、マウスの免疫応答が異なるためか、ヒトのような強い免疫応答は観察されなかった。 3 肝臓の分子病態解析 HCV mRNA発現に伴い、肝臓内に特異的な遺伝子発現変化が見られないか、リアルタイムRT-PCRによる定量解析で検討した。その結果、ヒトで観察されるインターフェロン誘導遺伝子群や細胞周期関連遺伝子の発現増強が、観察された。以上より、アルブミンプロモーター制御下の全長導入トランスジェニックマウスは、ウイルス遺伝子発現量や組織病態変化から、炎症の弱い、一部の慢性肝炎患者に類似するモデルと考えられる。しかし、ウイルス抗体産生能などヒトとは大きく異なることより、ヒト慢性肝炎肝細胞癌モデルとしては、ウイルス抗原に対する免疫反応の導入が、必須と考えられた。
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