研究概要 |
[目的]高血圧症とアンジオテンシノーグンの遺伝子多型(M235T)との関連性について、サンプルサイズが一定程度大きい職域集団を対象に(1)遺伝子型分布に関する記述的研究、(2)1998年度の健診受診者を対象とした症例・対照研究、(3)1992-1998年にわたる後ろ向きコホート研究などを実施した。[方法](1)遺伝子型分布に関する記述的研究:1998年度の健診受診者を対象に遺伝子型の分布に関して性・年代別の解析を実施した。(2)1998年度の健診受診者を対象とした症例・対照研究:対照は症例と性・年齢をマッチさせて選択した。(3)1992-1998にわたる後ろ向きコホート研究:7年間にわたる後ろ向きコホート研究を実施した。[結果と考察](1)遺伝子型分布に関する記述的研究:2042人の遺伝子型の分布はMM型,MT型,TT型,それぞれ3.9%,30.7%,65.5%であった。この分布は白人における報告と大きく異なっていたが,日本人における既報の結果と同様のものであった。(2)1998年度の健診受診者を対象とした症例・対照研究:症例,対照それぞれ201名について検討したが,BMI・血糖値・飲酒・喫煙・運動などを調整した多変量解析では、0.90(MM型に対するMT型)、0.87(MM型に対するTT型)のオッズ比をそれぞれ示し,有意な関連性を示さなかった。(3)1992-1998年にわたる後ろ向きコホート研究:性・年齢・BMI・血糖値・飲酒・喫煙・運動を調整した多変量解析では、遺伝子多型の高血圧症発症に関する相対危険度は統計的に有意ではなかったが、1.49(MM型に対するMT型)、1.25(MM型に対するTT型)をそれぞれ示した。有意な相対危険度は認められなかったが,アンギオテンシノーゲン遺伝子多型(M235T)は高血圧症発症に関して弱い関連性が認められた。
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