研究概要 |
我々は、これまでCAGリピート病の病態を解明する上で極めて重要な課題である、「リピートの不安定化機構」を解明するために研究を継続してきた。平成11-12年度は、meiotic instabilityとmitotic instabilityの分子機構について研究を行った。Meiotic instabilityについては,(1)Huntington病(HD)exon 1のreplacement mouse(homozygote)の精祖細胞・精母細胞・精子細胞・精子の単一細胞群をlaser-captured microdissection(LCM)を用いて単離して,CAGリピート数の解析を行った.解析に用いたmouseではCAGリピート数は細胞が分化するにつれて減少する傾向にあり,精子細胞は精母細胞に比べて有意にリピート数が減少することが判明した(Mann-Whitney U test,P<0.05).CAGリピート数の分散値は,精祖細胞と精母細胞、精祖細胞と精子細胞の間で有意に小さくなっていた(F-test,P<0.05).(2)spinocerebellar ataxia type 6(SCA6)家系において,20リピートが26リピートに,19リピートが20リピートに増大した例(de novo expansion)を見出し,これまで世代間でCAGリピートは安定していると考えられていたSCA6においても,比較的長い正常リピートは病的範囲に増大しうることをはじめて直接示した.Mitotic instabilityについては,(1)LCMを用いてMachado-Joseph病(MJD)患者2例の小脳皮質(分子層,Purkinje細胞層,顆粒層),白質の各単一細胞群のCAGリピート数の解析を行った.2例とも皮質は白質に比し有意にリピート数は小さく(Mann-Whitney U test,P<0.005-0.05),小脳皮質各細胞層間でのリピート数の有意差は認められなかったが,顆粒層>分子層>Purkinje細胞層の順にrepeat数が短くなる傾向にあった.(2)MJD・HD患者の保存臍帯を用い,臍帯血と23年後(MJD),37年後(HD)の末梢血のCAGリピートのmosaisismを比較検討した.その結果,CAGリピート病の血液細胞のmosaicismは,時間経過とともに有意に増大することをはじめて示した(Mann-Whitney U test,P<0.005).
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