研究概要 |
本研究の目的は、外科侵襲での炎症・感染における滲出好中球の機能変化の意義を分子生物学的に解明し、さらに生体防御能増強、炎症遷延化防止、臓器障害発生抑制をめざした滲出好中球の機能修飾に焦点をあてた対策を開発することにある。 本研究は以下のような研究実績を得た。 マウス腹腔内炎症惹起モデルで、1週間の栄養制限施行後,腹腔内に1%グリコーゲンを注入し2,4,8時間後に末梢血、滲出好中球を採取し、これらの接着分子発現能、滲出好中球数、ビーズ貪食能、PMA刺激活性酸素(ROI)産生能、腹腔内サイトカイン濃度を測定した. その結果、 1)末梢血好中球のCD11b,CD18発現は栄養制限で自由摂取群に比し有意に少なかった。 2)腹腔内滲出好中球数も栄養制限で有意に少なかった。 3)滲出好中球数と末梢血好中球のCD11b,CD18発現に有意な正の相関があった。 4)滲出好中球貪食能は栄養制限で有意に少なかった。 5)滲出好中球のROI産生能は栄養制限で多かった。 6)腹腔内IL-6,IL-10,MIP-2濃度は栄養制限で有意に低かった。 すなわち、低栄養では末梢血PMNの接着分子発現低下、滲出PMN数減少、局所サイトカイン濃度低下、滲出PMN機能異常がみられ、これらが低栄養時の侵襲局所の感染惹起に関連していることが示唆された。 栄養療法は、これらの滲出好中球の機能変化を修飾することを通じて、低栄養下外科侵襲での感染症や炎症の増悪、遷延化の防止、臓器障害発症の抑制に役立つと考えられた。
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