研究分担者 |
鈴木 哲也 山梨大学, 医学部, 助手 (30324198)
板倉 淳 山梨大学, 医学部, 助手 (10252032)
藤井 秀樹 山梨大学, 医学部, 助教授 (30181316)
池田 靖洋 福岡大学, 医学部, 教授 (40038758)
須田 耕一 順天堂大学, 医学部, 教授 (80090596)
安留 道也 山梨医科大学, 医学部, 助手 (70313814)
茂垣 雅俊 山梨医科大学, 医学部, 助手 (00230037)
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研究概要 |
先天性胆道拡張症(拡張症),膵・胆管合流異常(合流異常),先天性肝門部胆管狭窄(肝門部胆管狭窄)および膵癒合不全などの形成異常は,成因と形態定義が未解明である。本研究ではまず本態,診断基準,臨床像の解明のため,自験200例の形態的解析を行なった。拡張症は胎生6週から10週の間に胆管末端部から肝門部に向って経時的に起こる原始総胆管の内腔形成期に生じた内腔の形成異常である。合流異常は胎生3週末から4週始めの,肝憩室腹側膵の分離形成時に生じた胆管と腹側膵の導管の接合不全である。すなわち,本来の合流形態であるcommon channelの形成が行なわれず,胆管末端が腹側膵の種々の導管と合流する形態をとる。肝門部胆管狭窄は,肝細胞から形成される肝内胆管の内腔形成時に,肝内部で肝内胆管と肝外胆管の内腔の疎通の不一致によるものである。膵癒合不全は胎生6週から始まる腹側膵と背側膵の癒合不全およびその導管系の接合異常である。本研究により上記の形成異常はその本態に基づいた診断基準を作定出来た。臨床症状はいずれの形成異常も独自の臨床症状はあるものの,多くの症例にはこれら形成異常が重複して存在するために新たな症状が発生することは解明された。すなわち,拡張症単独例は極まれで,大部分は合流異常と併存し,拡張胆管内胆汁うっ滞,そして胆管内胆石形成および急性膵炎,胆管炎が主たる症状である。合流異常単独では急性膵炎,胆道癌,閉塞性黄疸および間歇的腹痛である。肝内部胆管狭窄は肝内結石,肝膿瘍および肝内胆管癌。膵癒合不全は腹痛,膵炎が臨床症状であった。合流異常単独例では,胆道粘膜の過形成と異形成が高度で,細胞回転の著明な亢進がほぼ全例に認められた。されにK-ras癌遺伝子,P53癌抑制遺伝子の異常が胆嚢粘膜上皮に認められ,合流異常が胆嚢癌の高危険群であることを明確にした。また拡張症との併存によって,胆管癌,肝内胆管癌の背景病態であることを明らかにし,これら4つの形成異常を臨床的に体系化でき,「胆道形成異常の臨床-発生から発癌まで-」の冊子として上梓した。
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