研究概要 |
我々は,慢性関節リウマチ(RA)の骨髄に注目し、異常な骨髄球系細胞を認め、またこれらの細胞を抱きこみ、増殖維持させる間質(ナース)細胞を骨髄および滑膜より樹立した。本研究において、このRAの病巣形成に重要な役割を果たしていると考えられるナース細胞について検討をした。 ナース細胞特異的遺伝子(NSR1,#4-14)をクローニングし、遺伝子構造を決定した。またナース細胞依存的に培養されるB細胞の産生している抗体の一つがelongation factor 1 alphaを認識する自己抗体であることが判明した。RA由来関節液培養から前破骨細胞を得て、それらが組換えヒトIL-3,7,GM-CSF添加により破骨細胞様細胞へ分化誘導されること、末梢血CD14陽性単核球もナース細胞との共培養により前駆細胞に誘導されることなどを示した。この破骨細胞様細胞は象牙切片上での吸収窩を形成等、各種の破骨細胞の機能を示すと共に、MMP-1,2,3,9,14の他、CathepsinB,D,K等の遺伝子発現が確認され各種細胞外マトリックス分解酵素の産生により、骨軟骨破壊に関与していることが示唆された。また、ナース細胞単独もしくはB細胞や骨髄から得られた単核細胞(MNC)を用いたヒト軟骨上での培養系をSCIDマウス皮下に移植し、一ヶ月後に取り出した後組織切片を作成し、軟骨破壊について検討した。ナース細胞単独でも関節軟骨への浸潤は認められたが、B細胞やMNCとの共培養で浸潤は増強された。ナース細胞の対照として用いた皮膚線維芽細胞単独では浸潤は認められず、B細胞やMNCとの共培養でも浸潤は軽度であった。 以上のようにナース細胞は直接および間接的に骨・軟骨破壊に関与することが証明され、RAの骨・関節破壊に重要な役割をはたしていることが示唆された。
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