研究概要 |
1.膀胱癌におけるuPA,uPAR,PAI-1,PAI-2の発現 urokinase-type plasminogen activator(uPA),urokinase-type plasminogen activator receptor(uPAR),plasminogen activator inhibitor-1,2(PAI-1,PAI-2)の膀胱癌におけるmRNAの発現を検討した。これらの遺伝子の発現は浸潤癌で有意に高く、histological gradeおよびpoor outcomeと強く相関していた。さらに、uPA遺伝子の高い発現は進行癌症例のみにしぼった検討においても有意な予後不良因子となっていた。 2.尿路上皮癌における活性化型MMP-2の検討 尿路上皮癌における活性型MMP-2の浸潤における役割についてgelatine zymographyにより検討した。total MMP-2(活性化型+潜在型)および活性型MMP-2のレベルを測定したところいずれも浸潤癌で有意に高く、histological gradeとも相関していたが、活性型MMP-2のレベルがより強い相関を示した。さらに、高い活性型MMP-2レベルと予後との間に強い負の相関が認められ、活性型MMP-2は有用な予後因子となることが示唆された。 3.膀胱癌におけるVEGFおよびPDECGFの発現 vascular endothelial growth factor(VEGF)のisoformおよびplatelet-derived endothelial cell growth factor(PDECGF)のmRNAの発現をRT-PCRを用いて膀胱癌において検討した。VEGF121,165,189および206の4種類のisoformのmRNAの発現が膀胱癌組織で確認されたが、VEGF isoformの遺伝子発現と進行度に相関はなかった。しかしながら、VEGF isoformのtotal VEGFに対する相対的な発現を検討した場合、【greater than or equal】pT2腫瘍におけるVEGF206およびVEGF189の発現は【less than or equal】pT1腫瘍のそれらと比較して有意に低く、逆に【greater than or equal】pT2腫瘍におけるVEGF121の発現は【less than or equal】pT1腫瘍のそれと比較して有意に高かった。【greater than or equal】pT2腫瘍におけるPDECGFの発現レベルはpTaもしくはpT1腫瘍いずれと比較しても有意に高かった。 4.膀胱癌におけるSPARCの発現 膀胱癌の進展におけるSPARC(secreted protein,acidic and rich in cysteine)の影響について検討した。SPARCの遺伝子発現はG1腫瘍と比較してG2およびG3腫瘍で有意に高レベルを示し、浸潤性腫瘍で表在性腫瘍に比しやはり高レベルを示した。さらに、SPARCの遺伝子発現は有意な予後マーカーとなることが確認された。
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