研究概要 |
本研究では炎症下で放出されるサイトカイン,生体防御因子あるいは歯科材料中の材料固有の成分がプラーク微生物叢の変化に与える影響について検討を行った結果,以下の知見を得ていた. ・フッ素系および加熱重合型シリコーン軟質裏装材では,材料成分それ自体にC.albicansに対する殺菌作用があり初期接種菌の一部が殺滅された. ・アクリル系軟質裏装材の成分には殺菌作用は認められなかったが,持続的な成分の溶出に伴う発育阻害が引き起こされた. ・常温重合型シリコーン裏装材ではこのような抗菌性は認めなかった. ・C.albicansの感染に伴って,歯肉細胞により,IL-1α,IL-1β,IL-8の炎症性サイトカインのmRNAが発現される. ・歯肉細胞に発現したIL-1α,IL-1β,IL-8の炎症性サイトカインのmRNAのうち,IL-1αおよびIL-8はタンパクとして産生されるが,IL-1βに関しては翻訳が起こらない. ・Candida6菌種33菌株について検討を行った結果,C.tropicalis,C.guilliermondii,C.albicansに対して非常に高い殺滅作用が認められた. ・また,C.parapsilosisやC.kruseiに対しては菌株による感受性の違いはみられるものの比較的高い効果が認められた. ・しかし,C.albicansのうちHIV陽性患者の口腔内分離株に対しては,HIV陰性患者からの口腔分離株に比べて有意に低い感受性を示した. ・高齢になるほど口腔からの分離頻度が増加するとされ,またアズール系抗真菌剤に対して低感受性であることで知られているC.glabrataに対しては菌株による感受性の差が44.4%〜87.5%と大きいもの,基本的にはやはり低感受性であった
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