研究概要 |
シリコーンバイトの上下顎咬合面を直接非接触形状計測し,コンピュータ上で解析する三次元咬合診査法の開発,および健常者の咬頭嵌合位における咬合接触および咬合面形態の評価基準の設定を試みた.被験者として,顎口腔系に自覚的他覚的に異常を認めず,臼歯部に齲蝕および修復処置のない健常有歯顎者5名を選択し,被験歯は上顎第一小臼歯,上顎第二小臼歯,上顎第一大臼歯および上顎第二大臼歯各10歯,計40歯とした.各被験者から咬頭嵌合位の咬合状態を印記したシリコーンバイトを採得した.非接触三次元形状計測装置(SURFLACER VMS-250R,UNISN社製)を用いて,シリコーンバイトの形状計測を行った.上顎咬合平面を基準平面として,基準座標を設定した.上下顎歯間距離60μm以下の領域を咬合接触域として,シリコーンバイトイトの三次元構築データから,咬合接触域に含まれる計測点を抽出した.咬合面上で1つの計測点が占める面積と咬合面に対する法線方向を表示する,面積ベクトルを算出した.咬合接触域の傾斜方向を表現するために,前頭面観における側方的な傾斜方向(以下,Lateral angleとする)と,矢状面観における前後的な傾斜方向(以下,A/P angleとする)の2つのパラメータを用いた.上顎臼歯咬合面において,60%以上の接触率を持ち,かつ1点以上接触している部位を高頻度接触部位とした.高頻度接触部位およびLateral angle,A/P angleのピーク値あるいは一様な分布を示す場合にはその中央値から推定した,健常者の上顎臼歯における出現頻度の高い咬合接触域の位置および傾斜方向を示した.以上のことから,三次元咬合診査法を用いて健常者の咬頭嵌合位における咬合接触状態を三次元的に解析し,上顎臼歯において出現頻度の高い咬合接触域の位置および傾斜方向を示すことができた.
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