研究概要 |
本研究は,現在の修復治療を主体とした歯科診療体系を,リスク判定・初期齲蝕病変の早期検出・再石灰化促進療法を統合的に駆使したカリオロジーに基づく診療システムに転換するため,その具体的な方策を(1)初期齲蝕の検出方法,(2)リスク判定方法,(3)再石灰化促進材料の応用,の観点から検討した。 (1)初期齲蝕の検出方法 齲蝕を歯質電気抵抗の変化として把握するelectrical caries monitor(ECM)は,脱灰深度100μm程度の脱灰病巣をも定量的に感度よく検出できる性能を有しており,初期齲蝕の検出とモニタリングにきわめて有用な装置であることを確認した。 (2)リスク判定方法 唾液検体を臨床検査センターに輸送して行う外注型の複合齲蝕リスク判定システムは、臨床的な個別歯科保健管理に有用であるほか,学校歯科保健のなかで集団的に応用した場合には,ハイリスク者のスクリーニングにきわめて有効であことが確認された。 (3)再石灰化促進材料の応用 フッ素徐放性歯科材料、とくにグラスアイオノマーセメントは周囲歯質の脱灰抑制ならびに再石灰化促進に有効であり,歯質への接着性もあることから,初期齲蝕には第一選択の修復材料であると結論された。また,馬鈴薯由来のリン酸化オリゴ糖は,唾液の再石灰化能を改善,促進する物質として有用性が高く,食品への応用が可能であることをin vitro, in vivo両面から確認した。
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