研究概要 |
当該研究において,活性化血管内皮細胞上に発現するCX_3C-ケモカイン,fractalkineの単球およびNK細胞接着に及ぼす影響について検討を行い,以下に述べる結果について報告した. (1)単球系細胞株THP-1は,fractalkine receptor(CX_3CR1)を発現しており,固相化fractalkineおよび血管内皮細胞上のfractalkineに著明に接着した.また,可溶化fractalkineはG蛋白の活性化を介して,β1-,β2-インテグリンのファイブロネクチンおよびICAM-1に対する接着能を増強した.単球と血管内皮細胞との接着においては,インテグリン分子とfractalkineが協調的に作用していることを明らかにした(J.Immunol.vol.165,4313-4320,2000). (2)新鮮NK細胞はCX_3CR1を発現しており,固相化fractalkineおよび血管内皮細胞上のfractalkineに著明に接着した.可溶性fractalkineはNK細胞からの顆粒放出増強を介してNK細胞の標的細胞殺傷能を増強した.さらに,fractalkine遺伝子導入血管内皮細胞がNK細胞により著明に傷害されることを明らかにした(J.Immunol.vol.165,4055-4062,2000). (3)Fractalkineがインテグリンリガンドと協調的に接着を増強し,単球の細胞遊走をむしろ抑制することを明らかにした(Immunol.Cell Biol.,2001,in press).以上の結果より,fractalkineは血管内皮細胞と単球およびNK細胞との接着を誘導し炎症巣における細胞浸潤に深く関与すること,さらに内皮細胞上でのfractalkineの発現が血管内皮細胞自身の傷害にも関与していることを明らかにした.
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