研究概要 |
ほとんど全ての有機化合物は疎水性部分構造有する.有機分子間に起こりうる疎水的相互作用を有機変換反応の挙動制御(反応性,選択性など)に積極的・戦略的に利用する試みはきわめて前例がない.本課題研究では、有機化合物がもっともその疎水性相互作用を強く発現しうる「水」を反応媒体とすることで,疎水性相互作用を駆動力とした有機反応制御をおこなう.既に両親媒性高分子レジン上への幾つかの反応性官能基(触媒活性種など)の導入と,それを利用した水中有機変換工程を実現している.固相レジン利用の利点を縦横に活用するならば,水中触媒活性が期待される官能基群のコンビナトリアル合成が可能である.本研究では:(1)両親媒性固相上での水中機能性触媒群のコンビナトリアル合成法の確立.(2)開発した方法論に立脚した触媒ライブラリーの構築,(3)ライブラリー利用による各候補分子の触媒機能評価.を実施する.またコンビナトリアル・アプローチの実施により短期間で100〜1000に及ぶ触媒候補分子の水中機能情報が集積できることから,最終的には:(4)集積した情報に立脚した水中反応制御法の指針の提出.を目標とした. 具体的には遷移金属-ホスフィン錯体を両親媒性固相に担持し従来有機溶媒中で実施されてきた合成プロセスの水中実施を検討した.昨年度の研究では水中でこそ進行するパラジウム触媒による最も代表的な炭素-炭素結合形成反応であるアリルエステル類求核置換反応および一酸化炭素挿入によるカルボン酸合成反応を完全に水中で実施できる反応系を確立し,報告した.本年度はこの水中触媒反応の駆動概念をロジウムなどにも適用し,触媒的水素化反応,オキソ型反応などへと展開する.現有の設備により若干名の大学院生と共同で推進した.またさらにワッカー法やアリル位酸化反応など,種々の酸化反応など汎用性に富む変換工程の水中実施を実現した.
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