研究概要 |
視覚または聴覚に障害を持つ人たちの様々な生活シーンにおける,情報保障方法の可能性と問題点を検討するために,ネットワーク上および対面場面でのコミュニケーション時の問題について評価し考察を行った. 1.インターネットを介した,文字ベースのコミュニケーションシステムの実現と評価 ユーザである視覚障害者および聴覚障害者の声を反映しながら,音声合成(全盲者対応),拡大文字倍率およびコントラストの調整(弱視者対応),情報受信時のアテンション(聴障者対応)等の機能を備えたチャットソフトを開発した.本ソフトを用いて,視覚障害者と聴覚障害者によるネットワーク通信実験を行った.その結果,互いの障害について意識しあうことなくコミュニケーションを行えることを確認した.しかし,合成音声使用時の操作時間遅れ,非言語情報の伝達方法などの検討課題が残された. 2.対面場面での視覚障害者・聴覚障害者間のコミュニケーションの評価 対面場面でのコミュニケーションについて,(1)直接対話(読話等),(2)筆談,(3)手話・音声通訳を介する,(4)チャットを用いる,などの方法について,実際のコミュニケーション場面を通して評価した.特にチャットに関しては,他者を介さず,「確実に」情報が伝わるなど,評価が高かった.また,対面場面ではPDAのような機器の小型化の要望もあった. 3.対面場面での聴覚障害者・健聴者間のコミュニケーションの評価 音声認識技術を用い,健聴者が発する音声をコンピュータが認識し,文字に変換して聴覚障害者に提示するシステムを実現し,評価した.文字の表示方法については,個人差もあるが,発言と発言者および発言タイミングとの関連性が重要であることなどが明らかになった.本システムをウェアラブルコンピュータに実装し,音声化した文字をヘッドマウントディスプレイに表示することにより,システムを小型・汎用化できる.
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