研究概要 |
19個のカソードを配列させて独立に動作させる電子源を開発し,各カソード毎に直径1mm以下,長さ230mmの紐状の電子分布を作ることに成功した.各紐状の電子分布は電気的斥力と磁場の働きで自転し,その周りの電子も回転させる.この流れは非圧縮性流体と等価なものとなり,電子密度が渦度に比例する.つまり紐状の電子の集まりは渦糸そのものであり,分布に広がりを持たせることもできる,このように新しく創り出した電子渦システムを使って以下のように多くの新しい発見ができた.[ ]の中の参照番号は「11.発表論文リスト」の上からの順番を示す. (a)渦糸の複数個同時生成に初めて成功し,渦糸の本数が少なければその運動がHamiltonian記述に従うことを確認した.[Kiwamoto et al.J.Phys.Soc.Jpn.Lett.Vol.68(1999)3766.1,2に略述] (b)渦糸間に低レベルの背景渦度を存在させると急速な合体が起きることを初めて観測した.[同上] (c)渦糸は背景渦度分布の勾配を登る運動を初めて定量的に確認し,最新の理論モデルの妥当性を証明した.同時に理論モデルを越えた現象を指摘した.[6] (d)対称的であるが不安定な初期渦度分布からの変形に続き準安定的秩序構造が形成され,段階的に構造変化を繰り返すことを観測した.[院生論文準備中,1に略述] (e)多数の渦糸の初期分布を作り,その相互作用(移流や変形,合体を含む)の結果,生き残った渦糸が漸次配位数の減った結晶構造をの形成することを,初めて制御下で観測した.[院生論文準備中,1,2,4に略述] (f)渦間相互作用(乱流)の発展において,背景渦度の分布にさまざまな形とサイズの空乏域(渦孔)が形成されること,それによる遮蔽効果で渦糸間の相互作用が大きく変更され,不揃いな強度の渦糸の配列が対称性を獲得することを初めて観測した.[院生論文準備中,2に略述] (g)流れ関数の関数として渦度の分布特性を実験的に決定した.[3,院生論文準備中] (h)渦間相互作用における諸物理量(循環,エネルギー,角運動量,エンストロフィー,エントロピー等)を時間の関数として決定し,保存性の検討を可能にした.[院生論文準備中,3,5に略述] なお渦運動の動画をホームページで公開中である.[http://cobalt.phys.h.kyoto-u.ac.jp/users/kiwamoto/]
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