研究概要 |
平成11年度にはレーザーイオン源から低エミッタンスビームを発生するためのKrFエキシマレーザー照射系の開発とイオン源の特性試験を中心に研究開発を行い,結果的に当初使用していたNd:YAGレーザーの場合を上回るビーム強度を得ることができた.またMCPとCCDカメラを用いてエミッタンスの時間分解測定に成功し,実際にレーザーイオン源からのビームのエミッタンスが1パルスの間で時間的に大きく変化することを見出した.しかし,より短波長のエキシマレーザーを用いても予想された低いエミッタンスは得られなかった.この結果から,レーザープラズマの流体的挙動やプラズマへのレーザーの進入深さ等,多数の因子間の複雑な相互作用によってビームのエミッタンスが決まっていることが明らかになった. 一方,平成12年度には非線型空間電荷力によるエミッタンス増大測定実験のために静電四重極チャンネルを接続してビーム輸送試験を開始した.しかしビームの発散が極めて強く,チャンネルにほとんど入射できないことが分かった.そこで電極を同心球面状構造に変更して再度チャンネルへの入射を試みたが,過集束のためビームは再び大きく発散した.したがって当初予定していたビームエミッタンス増大測定実験は実施できなかった. 実験に並行してビーム粒子に働く非線型空間電荷力とその運動を記述する3次元粒子コードを開発し,ビーム挙動の数値解析を行った.断面の粒子密度分布が一様及び非一様の楕円断面ビームに対してチャンネル内でのエミッタンスの推移を調べたところ,非一様ビームの場合に大幅なエミッタンスの増大が見られ,同時に断面密度分布は一様に近づくことが数値的に再現できた.これによりビームに蓄えられた非線型空間電荷エネルギーが解放されてエミッタンスの増加をもたらすというメカニズムを数値的に確認することができた.
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