研究概要 |
1.富山県神通川流域カドミウム(Cd)環境汚染地域3地区(11集落)に居住する54〜69歳の男性93人(80%)の尿カドミウム(UCd)(5.4μ9/gCr)は,対照とした同町1集落の同年齢の男性26人(87%)(3.8μg/gCr)より有意に高値であった。54〜60歳と61〜69歳の2群別の検討では,61〜69歳群において尿β_2-ミクログロブリン,UCdが有意に高値であった。出生年代の違いがCd曝露および腎臓への影響に大きく関与していた。 2.同上地域の45〜54歳の女性住民103人(75%)から尿を回収し95名について解析した。地区別UCd値は,対照A地区2.6μg/gCrに対し,汚染地域B, C, D地区では5.2,5.2,4.0μg/gCrといずれも有意に高値であった。地区別自家生産米平均Cd濃度は,A地区0.14ppm, B地区0.04ppm, C地区0.07ppm, D地区0.07ppmと,土壌復元事業の結果,汚染地区のほうが対照地区よりも低値であった。 同上地域の45〜55歳の男性住民88人(70%)から尿を回収し78名について解析した。地区別UCd値は,対照A地区1.8μg/gCrに対し,汚染地域B, C, D地区では2.1,3.3,3.7μ9/gCrといずれも有意に高値であった。地区別自家生産米平均Cd濃度は,A地区0.11ppm, B地区0.08ppm, C地区0.17Ppm, D地区0.05ppmであり,地区間に差はみられなかった。 以上の結果より,汚染地区男女住民にみられたUCdの高値は,調査時点のCd曝露量ではなく,腎臓に蓄積したCdレベルを反映していると考えられた。したがって,1946年以後に出生した男女住民においても,Cdの異常曝露・体内蓄積が明らかとなった。尿細管機能障害の指標である尿α_1-ミクログロブリンは汚染地区住民において対照より高い傾向にあったが,統計的には有意ではなかった。
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