研究課題/領域番号 |
11480230
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中福 雅人 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80202216)
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研究分担者 |
嶋村 健児 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70301140)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
15,500千円 (直接経費: 15,500千円)
2000年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1999年度: 9,900千円 (直接経費: 9,900千円)
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キーワード | 神経発生 / 転写因子 / 神経幹細胞 / ニューロン / グリア / bHLH因子 / Notch |
研究概要 |
発生期神経系では、未分化な神経幹細胞より異なる領域にそれぞれ異なる形態と機能を持つ極めて多くの種類の細胞群が生み出される。本研究では、この神経幹細胞の増殖と分化の分子機構を明らかにすることを目的とした。特に本研究では、幹細胞から特定のニューロンが生み出される機構におけるBasic helix-loop-helix(bHLH)ドメインを持つ転写因子の発現と機能に焦点を当てた研究をおこなった。まず発生期脳におけるbHLH因子Mash1の発現動態および機能を組織学的解析あるいは培養系を用いた解析により詳細に検討した。また、Mash1遺伝子欠損マウスの異常を解析した。その結果、Mash1が神経幹細胞の自己複製から分化へのコミットメントの初期過程を正に制御する重要な因子であることを明らかにした。次に、後脳・脊髄神経管におけるOlig2,Ngn2,Mash1の発現と機能に着目した解析をおこなった。これらbHLH因子はいずれも胎生10.5日(E10.5)のラット神経管腹側において発現を開始し、E12.5では背腹軸に沿って特定の前駆細胞ドメインに発現していた。特にOlig2,Ngn2は運動ニューロンの前駆細胞と考えられる細胞群に特異的に発現していた。また、Ngn2は腹側介在ニューロン群の前駆細胞の一部においても発現が認められた。一方、Mash1は背側介在ニューロン前駆細胞に広く発現し、Olig2とはその発現は一致しなかった。以上の結果より、運動ニューロンの前駆細胞ではOlig2とNgn2が特異的に共発現することが明らかになった。次に電気穿孔法を用いてニワトリ胚神経管におけるbHLH因子の異所発現を試みた。その結果、Olig2とNgn2を共に異所発現することによって、神経管背側に異所的な運動ニューロンマーカー発現細胞が誘導された。一方、Ngn2あるいはMash1単独の異所発現では、運動ニューロンマーカーの誘導は認められなかった。このことは、特定のbHLH因子群の組み合わせによって特定の種類のニューロンの発生が制御されていることを示している。運動ニューロン誘導の機構をさらに詳細に解析した結果、Olig2とNgn2は協調して神経前駆細胞の領域特異性を制御し、さらにNgn2はニューロン分化を促進する機能を持つことが明らかとなった。以上の結果から、脊髄神経管においては複数のbHLH因子がそれぞれ特異的に発現し、その組み合わせによって特定の部位に特定の性質を持つニューロンが生み出されることが明らかとなった。
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