研究概要 |
中赤外波長域については,吸光スペクトル測定には,フーリエ変換赤外分光光度計を用い,入射光をカルコゲナイド光ファイバーに導き,先端部に組み込まれたカルコゲナイドATRプリズムと試料表面の薄層間で減衰全反射を行わせ,反射光を水銀-カドミウム-テルル半導体検出器にて検出した。まず,本法をブドウ糖水溶液(ブドウ糖濃度:50〜1000mg/dl)へ適用,ブドウ糖固有の吸光ピークを波数1033及び1080cm^<-1>に認め,波数1080cm^<-1>の吸光強度がブドウ糖濃度定量化のパラメータとして最適であることを確認した。次に,カルコゲナイドATRプリズムを口唇粘膜へ一定圧で接着,口唇粘膜組織の吸光スペクトルを解析した結果,ブドウ糖水溶液と同様,ブドウ糖固有の吸光スペクトルを認めた。さらに,静脈内ブドウ糖パルス状負荷時の口唇粘膜組織の吸光強度は,4分の時間遅れで血糖値の変動によく追随することを認め,口唇粘膜組織の吸光強度の変化が組織内ブドウ糖濃度の変化を反映していることを確認した。現在,糖尿病患者における血糖日内変動の計測を試みており,波数1080cm^<-1>の吸光強度と血糖値の間に相関係数r=0.92と高い正の相関を認め,本システムが非侵襲的血糖計測システムとして有用であることが示された。 また,近赤外波長域においては,石英光ファイバーを用いた透過光及び拡散反射光での計測を行い,吸光スペクトルはインジウム-アンチモン半導体検出器にて検出した。まず,本法をブドウ糖水溶液へ適用した結果,8500〜11000cm^<-1>に,ブドウ糖濃度依存性に吸光スペクトルが変化する領域を認め,この領域を用いて検量線の作成を試みた。さらに,耳朶や指頭部にて透過光及び拡散反射光の吸光スペクトルの測定可能なプローブを作製した。本プローブを用いて得られた吸光スペクトルを多変量解析することにより,血糖値との間に相関係数r=0.76と高い正の相関を認め,本法の有用性を確認した。
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