研究概要 |
基本的には共焦点レーザー顕微鏡であって,しかし超小型かつ簡便無調整で,かつ高効率,高分解能で,特に極低温下でも容易に動作可能なレーザー顕微鏡を開発した。適当な長さを持つロッド状の屈折率分布型(GRIN)レンズの一方から平行光を入射すると,反対の端面上で焦点を結び,1本で作動距離=0の対物レンズとして動作する。この性質に着目して物性研究用の顕微鏡としたもので,試料をレンズの端面に直接付けることで,固浸レンズ動作により分解能が向上する。従来の光学顕微鏡が,高効率であるものの分解能に回折限界があり,一方,原理的にはこの限界を超える走査型の近接場光学顕微鏡(NSOM)も,その代償として信号強度を取りにくく,高精度かつ精密な分光測定を必要とする光物性分野では,なかなか実用化し切れていないのが現状である。本顕微鏡は,これら両者を補完する位置づけにあり,特定の使用目的には十分実用になることを実証した。 メゾスコピック構造系として,このようなサブミクロンレベルの顕微分光にふさわしい舞台として,擬イソシアニン分子(PIC)による分子性のJ-会合体を対象に,新規な光物性研究を展開した。J-会合体自体は古くから研究例も多いが,ミクロな会合構造と一次元のFrenkel励起子が起源であるとされる電子励起状態との相関は明らかではなかった。会合体のミクロ構造を同定する手段がなかったことによる。本研究では,特定の高分子媒質の中ではJ-会合体が束ねられてサブミクロン程度のフィブリル状になることに着目し,1本のフィブリルに対して顕微反射分光を適用し,多くの新しい知見を得た。一例として,局所的に見られる「励起子-ポラリトン」生成の可能性を提案した。0次元Wannier励起子を特徴とする有機・無機複合のCdSe半導体ナノ微結晶の合成技術は,直径2〜5nmの領域に未だ限られるものの,発光効率が50%を越える域にまで達した。
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