研究概要 |
地球システムにおける物質・エネルギー循環を解明するため,地球表層を大気圏・水圏・生物圏・岩石圏の四圏に区分し,炭素循環とエネルギー循環との間の相互フィードバック効果も考慮したグローバルなスケールの数理モデルを構築した。このモデルによる解析結果によれば,グローバルな陸域植生の純一次生産量は1920年以降増大傾向にあり,1980年代には10年間で1.3%程度の増加傾向であることが示された。一方,この物質-エネルギー循環モデルに制約条件を与えるため,地球観測衛星による時系列的なリモートセンシングデータの解析を行った結果,植生によるグローバルな純一次生産量は1980年代の10年間で2〜4%程度の増加傾向が認められた。また,純一次生産量の地域的な変動傾向とその時間的な変化トレンドを解析したところ,北半球高緯度地域などにおける顕著な増加傾向と気温上昇との相関が見出された。さらに植生の時間変動についての解析結果を検証するために,愛知県名古屋市周辺などの幾つかのテスト地域を対象としてLANDSAT MSSやTMデータによるローカルな植生被覆の時間変化の解析も行い,地表被覆が実際に変化したことを確認した。これらの高い空間分解能の地球観測衛星データを用いて,物質・エネルギー循環において重要なパラメータである蒸発散や反射率などの解析も実施した。また,ローカルな現象を高い空間分解能で観測するため,TMよりも進んだ最新の高分解能多バンドイメージャASTERについて,その観測性能の評価を行い,観測性能要求を満足していることを確認した。ASTERデータは,ブラジルのアマゾン地域などのテストサイトにおいて植生被覆変化域の抽出に有効であることがわかった。実験室内においては,リモートセンシングデータの解析のための基礎情報となる様々な物質の分光特性データの収集を行った。
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