研究概要 |
本研究では,超短光パルスの時間幅を見積もることを目的として,半導体の二光子吸収を利用した光学調整の容易な小型自己相関器の試作を行った.二年の研究期間のうち初年度は,おもに半導体の二光子吸収特性を調べるとともに,マイケルソン干渉計にそれらの素子を組み込み,チタンサファイアレーザーからのピコ秒光パルスを対象とした相関測定を行った.その結果,用意した市販のInGaN系,GaAs系,GaAsP系のフォトダイオードや発光ダイオードにおいて,いずれの素子を用いた場合も,素子間に大きな差を見いだすことなくピコ秒パルスの実時間相関測定が行えることを確認した.次年度には,干渉計部分を小型簡易化した新しい自己相関器の試作を行った.隣接する二枚の石英板を用意し,一方の石英板は固定し,他方は回転機構をもたせ,その境界部分にパルスビームを入射することにより,回転側を通過したビーム成分に固定側のそれに対して時間遅延を与えた.両パルスビーム成分をレンズを通して窒化ガリウムやガリウム砒素リンの半導体素子上に集光するだけで,容易に二光子吸収にもとづくピコ秒パルスの強度相関波形が得られた.さらに,境界で生じる回折を利用することにより,フリンジ分解位相相関波形が再生されることを確認した.フリンジ波形は,平均入射光パワー100mW以上のとき,少なくとも波長740nmから840nmの範囲で観測可能であった.また,石英板の分散を考慮して,フラウンホーファの回折公式にもとづく数値計算を行い,本相関器により数10フェムト秒のパルス幅まで測定可能であることを見積もった.以上より,試作した自己相関器の有用性を確認した.
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