研究概要 |
以下に示すように,高速多重極境界要素法を用いることにより,通常の境界要素法では腐食解析が不可能な程複雑な構造物のカソード防食の最適設計および最適実施条件を決定することのできる解析システムを開発した. まず,原理的には境界要素法による腐食解析が可能であっても,要素数が膨大となり解析不可能となる程複雑な構造物に対処する特別な方法について展望した.環境の違いや時間の経過による分極特性の変化を考慮した実際の海水ポンプに対する解析結果の実験的検証,真鍮製の管板に固定された数千本のステンレス管に海水を流す熱交換機に対する巨視的分極特性の利用,大型船舶のペイント欠陥の同定やカソード防食用供給電流の最適化手法など様々な研究・工夫を,本研究の位置付けとともに再確認した.展望結果をNACE-Corrosion'99のTopical Symposiumで発表した. いっぽう,一般に境界要素法においては密行列を係数とする代数方程式を解かなければならないので,大規模な問題を取り扱うためには特別の工夫が必要となる.これに対処するために,ポテンシャル問題や弾性問題などの境界要素解析に対して,計算量をおよび記憶量を減少することのできる高速多重極展開法を利用するための研究が活発に行われている.そこで,この高速多重極境界要素法を腐食解析に利用する方法を開発し,材料学会誌に発表した. さらに,高速多重極境界要素法をカソード防食の最適化に利用する方法について研究を行った.当初は,等価境界条件法を開発し,これと高速速多重極境界要素法を併用してカソード防食の最適化を行う計画であったが,高速速多重極境界要素法の特徴を生かして逆解析により初期値を設定すれば,等価境界条件法と併用しなくても最適化が効率的に行えることに気付き,この考え方に従って効率的最適化プログラムを開発した.この結果を機械学会計算力学部門で講演発表し,現在,本論文を機械学会論文集に投稿中である.
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